ストック型メディアとフロー型メディアはご存知ですか?この2つのメディアにはそれぞれ得意分野がありますので、2つの違いと特性を知ることでコンテンツマーケティングをより効果的にすることができます。シェアド・コンテンツマーケティングはトリプルメディアの融合であり、シェアドメディアであり、そして、今回のテーマ、ストック型メディアとフロー型メディアの融合でもあります。上手に活用することでマーケティング効果も更に高まります。
主な内容
ストック型メディアとフロー型メディアの違い
2つのメディアを象徴的に分けるもの
検索型と拡散型
「シェアドコンテンツマーケティング」とストック型とフロー型メディアの特性
ストック型とフロー型のメディア特性を理解した「シェアドコンテンツマーケティング」の有効施策
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■ストック型メディアとフロー型メディアの違い
ストック型メディアとフロー型メディアについては、【コンテンツマーケティング】成果がでる、でないはこれで決まる! 『制覇その3:コンテンツの手法を知る』の記事の中でも触れていますので、ぜひ、そちらもお読みください。
さて、今回のテーマでは、この2つのメディアの特性を鑑みながら、シェアドコンテンツマーケティングとの関連や有効性についてお話しします。まずは、この2つのメディアの違いを見ていきましょう。以下の通りです。
ストック型メディア
コンテンツを蓄積しながらメディアを構築できるメディア
【例】ブログなど
フロー型メディア
コンテンツが流れる(フローする)メディア
【例】Twitter、Facebookなど
人によりストック型とフロー型の捉え方に違いもあり、厳密に何が正解かは一概には言えません。例えば、Twitterはフロー型でも、Facebookはストック型メディアと言う人もいます。どちらの見解も正しいものです。ここでの目的は、どのメディアがストック型がフロー型を明確に分けるのではなく、2つの違いと特性を知って、上手に使い分け、あるいは組み合わせて、マーケティングにお役立いただくことです。
まずは、この2つの定義の違いを押さえて下さい。
■2つのメディアを象徴的に分けるもの
実は、この2つのメディアには、その違いを決定的に分ける象徴的な特性があります。
資産性と適時性(タイムリー性)
2つを明確に分けるものこの資産性と適時性(タイムリー性)にあります。一見、まったく異なる特性にも見えますが、実はどちらも時間軸と関係します。この象徴的な特性の違いをそれぞれ見ていきましょう。
【ストック型メディア = 資産性】
資産性とは発信するコンテンツが蓄積(ストック)され、資産として構築される価値のことですが、ストック型メディアはこの資産性に優れたメディアです。時間の経過と共にコンテンツが蓄積され資産形成されることに特徴があります。
例えば、ストック型メディアを代表するものがブログです。コンテンツマーケティングでもビジネスブログを継続的に公開しますが、最大の特徴は、まさに、記事(コンテンツ)を随時更新ながら蓄積し、メディアを構築する点にあります。一度更新され公開されたコンテンツは、世界を網羅するインタネット情報網のウェブの1ページとして、掲載が削除されるまで永続的に残ります。また、そこに、新たなコンテンツが更新され公開されることにより、メディアの中でコンテンツが蓄積(ストック)されていきます。コンテンツが資産としてメディアの中にどんどん蓄積されていけば、さらにメディアそのものの資産も形成されていきます。そして、その情報価値がなくならない限り、コンテンツの効果と役割も永続的に機能し続けます。仮に時間の経過とともに劣化してしまったコンテンツでも、何かのタイミングでまた、価値を生み出すこともあります。「ストック型メディア=資産性」と言われるのはそのためです。
コンテンツ型メディアで最も重要なことは、コンテンツそのものの質と価値です。対象読者にとり良質で価値あるコンテンツを継続的に配信し続け、蓄積することで、量・質共に、その深さや幅も増していきます。メディアそのものの資産価値を高めることができます。
コンテンツ型マディアと最も相性がいいメディアタイプは、オウンドメディアです。自社発信のサイトを構築し、ストック型メディアとして良質な価値あるコンテンツを蓄積することで、サイトの成長とともに、自社の価値も高め、マーケットでの地位を確立し、影響力も高めていくことができます。
【フロー型メディア = 適時性(タイムリー性)】
一方、フロー型メディアの特性はコンテンツが次から次へと流れる(フローする)ことです。フローとは流れるという意味です。ストック型のメディアとは異なり時間軸で形成される価値ではなく、そのコンテンツの適時性(タイムリー性)が意味を持ちます。
このメディアで代表的なものは、TwitterやFacebookなどです。利用者の使い方にもよりますが、このメディアの強みは、「今起きていること」、「今ホットなこと」、「今思ったこと」・・・など、「今伝えたいこと」をリアルタイムでタイムリーに伝える力です。特徴はショートメッセージである、あるいはショートメッセージが好まれることです。コメントをほとんど加えることなく、ほぼ画像や動画だけの投稿も多くあります。流れていくコンテンツなので、しっかりと読み込ませる長いコンテンツとは相性がよくありません。流れるコンテンツの中で如何に利用者の目に留まるかが、投稿が読まれるか、読まれないかを分けることにもなります。(Facebookはストック型という議論もあり、その考え方にも同調できますが、筆者はフロー型と捉えています。ただし、テーマを外れる論点ですので、ここでは言及しません)。
フロー型の特徴は資産形成にはありません。「今、見て!」と、いう情報発信になりますので、何かに注目させたい、そんなコンテンツ配信に力を発揮します。また、ソーシャルメディアなど、多くの利用者が集まるプラットフォームで提供されますので、一度に短期集中的に多くの人の目に情報発信することができます。「一度に」、「このタイミングに」、「多くの人に」にメッセージやコンテンツを届けたい場合にはとても役立つメディアです。
フロー型メディアと相性がいいメディアタイプはアーンドメディアです。コンテンツそのものを積み上げ資産化するものではありませんが、タイムリー、且つ継続的に、興味や関心を惹き、共感・共有される情報を発信し続けることで、情報発信者としての認知や知名度を高め、親近感や信頼を形成し、参加者(利用者)との関係性を築くとこもできます。
■検索型と拡散型
この2つのメディアのもう一つの違いの特徴は、「検索型」か「拡散型」ということにあります。
コンテンツを蓄積することで資産価値にもなるストック型メディアは、コンテンツマーケティングではコアな部分を形成する要素と言えますが、さらに重要な特徴は、検索エンジンでの検索にもよく馴染む点です。
ストック型メディアで公開されたコンテンツは全てウェブ上に蓄積されます。そのため、ウェブの中から見つけるコンテンツと言えます。つまり、検索エンジンで見つけてもらうことが、コンテンツに読者を集める上での鍵となります。集客の観点からは、コンテンツに関連するキーワードで検索エンジン上位に表示され、検索されやすくすることが重要です。時間を要するプロセスになることもありますが、安定的に上位表示されるようになると、検索エンジンから安定した流入がありますので、集客効果は抜群に高まります。
一方、フロー型メディアは検索エンジンでの検索には全く馴染みません。そもそもの、TwitterやFacebookなどメディアサイトに滞在し利用するもので、「Twitterで何か面白い投稿はないかな?」などと、検索エンジンで検索してサイトを訪れる人はまずいません。また、メディアサイト上でも具体的に何かを検索するのではなく、タイムラインやフィードに流れる情報の中で、興味を惹かれたものを選んで見る、というような利用がほとんどです。具体的な何かを主体的に探しにいくのではなく、そこにある何かと出会う、というような受け身的な情報の受け取り方になります。そして、そのためには、その時、何かを伝えたい誰かがいることが前提になります。
つまり、今、情報を「発信したい人」=「拡散したい人」のコンテンツを見ることになります。
この情報(コンテンツ)の発信者が一次情報拡散者で、その情報(コンテンツ)を見た人が「いいね」「シェア」「フォロー」「コメントする」などを行うことで二次情報拡散者となり、情報の拡散力がさらに高まっていきます。集客の観点からは、この情報の拡散過程で認知され関係性を高めながら、間接的または直接的に集客につなげていきます。既に密度の高い多くのフォロワーやファンがいる場合は拡散効果も高くなります。そうでない場合は、メディアの広告(Facebook広告やTwitter広告)を利用し、まずは一次拡散を高めることができます。
■「シェアドコンテンツマーケティング」とストック型とフロー型メディアの特性
シェアドコンテンツマーケティングはストック型メディアとフロー型メディアの中間的な位置づけにあり、2つの特性を兼ね備えています。この2つのメディアを理解することでシェアドコンテンツマーケティングをより有効に活用し、マーケティングを展開することが可能になります。
ここでもう一度、2つのメディアの特性をまとめておきます。
ストック型
コンテンツの資産性が特徴で検索型であること、そしてオウンドメディアでの展開と相性がいい
フロー型
コンテンツの適時性(タイムリー性)が特徴で拡散型であること、そしてアーンドメディアでの展開と相性がいい
シェアドコンテンツマーケティングは自社サイトではありませんが、共通のメディアプラットフォームで自社のコンテンツを発信できます。ストック型とフロー型の特性と照らし合わせながら、シェアドコンテンツマーケティングを見ていきます。
〇ストック型メディアとしての特性
【資産性】
シェアドコンテンツマーケティングで配信するコンテンツは、自社サイトのコンテンツと同様、ウェブ上の1ページとして掲載され、削除されない限り存在し続けます。また、新たなコンテンツを継続的に公開し続けることで蓄積されますので、自社発信のコンテンツとしての資産性があります。
ただし、ここで配信されるコンテンツは、検索エンジンから見ると、メディアサイト上のコンテンツになりますので、直接的には、自社サイトの強化や資産にはなりません。(コンテンツの著作権は別です)。
【検索型】
コンテンツはウェブ上で掲載され、検索エンジンで検索できるサイトになります。ストック型メディアと同様、検索型の特徴を持ちます。また、コンテンツ毎にメタタグ(メタタイトルとメタディスクリプション)を設定することで、SEOを強化することができます。(メタタグの設定はメディアプラットフォームの機能にも依存しますので、詳細はメディア毎に確認が必要です)。
また、自社コンテンツに対する検索結果でなくても、同じメディアプラットフォームに掲載する他社コンテンツへの流入から、自社コンテンツに辿り着く場合も多々あります。つまり、特に集客やSEOを意識することもなく、自社コンテンツに読者を呼び込みやすいというメリットがあります。
【オウンドメディア】
自社サイトではありませんが、自社専用のアカウントを持ちコンテンツを配信しますので、オウンドメディアの機能も兼ね備えています。この点はTwitterアカウントやFacebookアカウント、Facebookページなどとも同じです。
メリットはサイトを構築することなく直ぐに発信メディアを持つことができ、コンテンツの配信ができる点です。
〇フロー型メディアとしての特性
【適時性(タイムリー性)】
適時性(タイムリー性)をそれほど重視するものではありませんが、利用の仕方によっては、例えば、新しい導入事例やお客様の紹介、イベントの案内、あるいは新商品情報など、アイデア次第でさまざまなタイムリーなコンテンツを配信することができます。従来のコンテンツマーケティングと比べても、適時性(タイムリー性)も兼ね備えています。
【拡散型】
ソーシャルメディアのように巨大なネットワークではなく、比較的興味や関心が限定された共有型のプラットフォームなので、それ自体の拡散力はそれほど強くありません。ただし、サイト上でのメンバー間の交流(フォーラムなど)ができるのであれば、その中での拡散力が期待できます。
【アーンドメディア】
アーンドメディアの活用目的が信用や評判などを獲得することだとすると、やはり、既存の巨大ソーシャルメディアの影響力には及びません。ただし、比較的限られた興味・関心対象をベースとする共有型のプラットフォームなので、その中で関係性を作ることができます。メディアによっては、会員(メンバー)同士の交流(フォーラム)もありますので、上手に活用することでさらに強固で密な関係性を築くことも可能です。
■ストック型とフロー型のメディア特性を理解した「シェアドコンテンツマーケティング」の有効施策
このようにシェアドコンテンツマーケティングはストック型メディアの特性を強く持つと同時に、一定のフロー型メディアの特性も活かせるマーケティングで、直ぐに始められることが大きなメリットです。また、「『シェアドコンテンツマーケティング』でネイティブ広告(ネイティブアド)を展開するとどうなるか? - 展開編」または「『シェアドコンテンツマーケティング②』従来のコンテンツマーケティングだけでは成果は上がらない理由。ネット伝説に踊らされるな!」の記事でもお話した通り、失敗のリスクを軽減でるのもメリットです。
コンテンツマーケティングでは、成果を出すために必要とされるコストの目安は、月30万円以上という調査結果もあります(「『シェアドコンテンツマーケティング(2)』従来のコンテンツマーケティングだけでは成果は上がらない理由。ネット伝説に踊らされるな!」をご参照)。このコストを負担することは、マーケティング予算などリソースが限られる事業者には、長期的な運用を考えた場合、かなり厳しい選択になります。そんな時は、コストを抑えて共有のメディアプラットフォームで自社コンテンツを配信する、シャアドコンテンツマーケティングも選択の一つになります。
また、ビジネスブログではなく、商材(製品やサービス)をコンテンツに記事を配信することができますので、コンテンツマーケティングと併用することで、ビジネスブログ(ナレッジベースのコンテンツ)または商材コンテンツのどちらを入り口にしても、案件化への仕組みに乗せることができます。また、ビジネスブログと商材コンテンツを行き来しながら、リードナーチャリングする流れを作ることもできます。(これらについては、ぜひ、「『シェアドコンテンツマーケティング』でネイティブ広告(ネイティブアド)を展開するとどうなるか? - 展開編」や「【コンテンツマーケティング】成果がでる、でないはこれで決まる! 『制覇その9:読者を顧客に変えるステップ!』」の記事も参考にして下さい)。
さらに、フロー型のソーシャルメディを効果的に組み合わせて活用することで、さらに拡散力と集客効果を高めることも期待できます。
シェアドコンテンツマーケティングも従来のコンテンツマーケティングも、良質で価値あるコンテンツを継続的に配信するという意味では、日々の運用には大きな差はありません。また、コンテンツが蓄積され資産価値が高まる点でもコンテンツマーケティングと同じです。両者の選択は、従来のコンテンツマーケティングと比較してどちらがいいかではなく、コンテンツマーケティングの運営のコストが重い負担になる事業者の、もう一つ別なコンテンツマーケティングの取り組み方、または既にコンテンツマーケティングを行う事業者が、さらに相乗効果を生み出すための方法として取り組むマーケティングの手法です。
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