前回の記事ではブランディングついて考えてみました。今回はアップルのブランディングを見ながら、ブランディングの仕方を考えてみます。ブランディングとは、”事業者や商材(製品・サービス)を他社から差別化する統一されたプラスの良いイメージを創出するプロセス” です。客やマーケットがどんなイメージをその事業者に持つかではなく、事業者が客やマーケットにどんなブランドを定着させるかであり、事業者自らが創出するものです。SCMはブランディングに貢献するマーケティングの施策です。
主な内容
ブランディングとは?
ジョブズ氏のこだわり
ジョブ氏のThink Differentとは?
ブレることなく一貫して何を伝え実現したいか!
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■ブランディングとは?
マーケの得ダネが定義するブランディングとは
„
事業者や商材(製品・サービス)を他社から差別化する統一されたプラスの良いイメージを創出するプロセス
”
です。大切なのは、「他社から差別化する統一されたプラスの良いイメージ」で、そして、それは事業者が「創出する」ものです。
人やマーケットがその企業や製品やサービスのことをどう思うか、どんなイメージを連想するかではありません。そのイメージが良いものであれ、悪いものであれ(悪いものでは困りますが)、ブランディングではありません。ただの企業に対するイメージしかありません。ブランディングとは「事業者側が狙うイメージの創出であり、それを客やマーケットに定着させること」です。戦略です。
ブランディングについては、前回の記事「『シェアド・コンテンツマーケティング(50)』ブランディングについて考える。客が貴社を見てイメージするものとは?」でお話しています。まだ、お読みでない方、またはブラッシュアップしたい方は、ぜひ、お読みください。
■ジョブズ氏のこだわり
アップル社の創設者、スティーブ・ジョブズ氏は、このブランディングにとことんこだわった経営者でも有名です。彼のブランディングへのこだわりは、アップルが世界に送り出した、コンピューターや音楽再生端末やスマートフォンなど、全ての製品の隅々までに散りばめられています。それは、それまで誰も見たこともない、体験したこともない、素晴らしく画期的なデザイン性と機能性に富んだ、創造を超える未知の体験をさせることでした。
ジョブズ氏のブランディングへのこだわり・・・、全世界でアップル製品をあそこまで衝撃的なものにしたものは、一体何だったのでしょうか?
それは・・・
„
Think Simple
"
この言葉に凝縮されています。
„
シンプルに考え、シンプルに行動せよ
”
です。ジョブズ氏の口癖でもあり、哲学でもあります。
アップル・・・スティーブ・ジョブズ氏のブランディングを考えるにあたっては、ぜひ、お読み頂きたい一冊があります。
『Think Simple アップルを生みだす熱狂的哲学』ケン・シーガル (著)/林信行 (監修)/高橋則明 (翻訳)/NHK出版
著者でありクリエイターのケン・シーガル氏がNext(ジョブ氏が創設したアップルを追い出された後に、自ら立ち上げた会社)とアップル(再びアップルへと迎え入れられた後)でジョブズ氏との仕事に携わった12年間を通して、経験し学んだジョブズ氏の「シンプル」という哲学を、核となる10の要素に落としこんで紹介した一冊です。
※ご興味がある方は、ぜひ、ご講読ください。
ジョブズ氏のブランディングへのこだわりは、並大抵のものではありません。全てを「シンプルに考え、シンプルに行動する」、そのことを突き詰め、実行しつくしたその後に見えてくる、ジョブズ氏のアップルの事業に対する核心を突くものです。それこそが、彼のブランディングの核にあると考えています。
■ジョブ氏のThink Differentとは?
ジョブ氏は、市場で何が売れるか、何が流行っているかを考えるのではなく、新しい価値を創出してイノベーションを起こす、そんな考え方をしていました。つまり、全く新し市場を創出することです。そのためか、市場調査のようなマーケティングは一切行いませんでした。
アップルは1998年、これまでのパソコンの常識を覆す、画期的で洗練された、全く新しいデザイン性と機能性の iMac を世に送りました。ジョブズ氏が構想を練り、開発を進めてきたプロジェクトの実現です。
実は、それに先立つこと約1年、同社は、1997年にあるCMを流しました。
„
Think Different
”
と題されたCMです。
翌年の iMac の発表に向けて、まだ製品名もない、開発の完成日も発売日も決まっていない商品を発売するための大掛かりなキャンペーンです。
しかし、そのCMでは製品名はおろか、製品そのものについても一切語られていませんでした。
「クレイジーな人たちがいる」で始まるこのCMでは、最後の最後まで製品は出てきません。語られることすらありません。
現れるのは世界を変えてきた人々の映像と、スティーブ・ジョブズ氏の言葉で語るメッセージだけす。
「反逆者、厄介者と呼ばれる人たち。四角い穴に丸い杭を打ち込むように物事をまるで違う目で見る人たち。・・・彼らは物事を変えてきた・・・彼はクレージーと言われるが、私たちは天才と思う。・・・自分が世界を変えられることを本気で信じる人達こそが、本当に世界を変えているのだから・・・」
※ 動画元 Keiji K氏(YouTube)
ジョブ氏がこのCMで伝えたかったのは製品ではありません。「アップルが世界を変える」、「アップルが新しい次の世界を創る」というメッセージです。「革新する会社」というアップルのブランディングです。
このブランディングは見事に成功しました。同社は消費者に「アップルの革新的なイメージ」、「アップルの最先端のイメージ」をしっかりと植え付けました。「パソコンを買う」という「行動」から、「アップル製品を買う」という「体験」に変え、「パソコンを使う」という「行動」から、「アップルを使う」という「体験」に変えてしまいました。アップルがブランディングしたのです。
その結果は、翌年の iMac の爆発的な売れ行きを見れば、既に歴史が証明しています。
その後もジョブズ氏は、次から次へと新たなブランディングを展開し、低迷し倒産の危機にあったアップルを、世界で最も成功する企業の一つまでに変えてしまいました。
余談ですが、アップルの最大の失敗は創設者であるスティーブ・ジョブズ氏を追放したこと・・・しかし、アップルの最大の成功はそのスティーブ・ジョブズ氏をアップルに呼び戻したこと・・・、と言えるのではないでしょうか?
■ブレることなく一貫して何を伝え実現したいか!
このアップルのブランディングのエピソードを見てどう思いますか?
ジョブズ氏(アップル)がブランディングなど、マーケティングや広告宣伝に掛ける費用は莫大です。
ですから、全ての事業者がアップルと同じことができるわけではありません。また、誰もがスティーブ・ジョブズ氏になれるわけでもありません。同じことはできません。それぞれの事業者には、そのタイミングや状況、また、経営者の資質によって、その時できることは違います。アップルにも、スティーブ・ジョブズ氏になれるわけでも、なる必要もありません。
ただ、ブランディングに対するこだわりを持つことはできます。
お金がないのなら、ないなりのブランディングもあります。お金があるなら、あるなりのやり方があります。
一貫して実現したいと思うことは何ですか?
どんな時でもブレずに一貫して持ち続ける価値観とは何ですか?
貴社をブレずに一貫した一つの言葉に表すなら、どんな会社ですか?
アップルのように「革新的」でなければ事業ができないわけではありません。伝統を守り続けることもブランディングです(伝え方、表現のしかた、新たな価値の創出など、時代への適応は必要ですが)。安さ一番もブランディングです。早さ一番もブランディングです。親切一番もブランディングです。
„
何を一貫して伝え、実現したいですか?
”
それを繰り返し、繰り返し露出し、伝え続けることです。
ナショナルブランドやグローバルブランドにならなくても、その分野、その地域のブランドになることもできます。ブランドの認知と確立は簡単ではありませんが、そう取り組むこと、ブランディングすることは、プラスになってもマイナスになることはありません。
シェアド・コンテンツマーケティング(SCM)は、資金や人材などリソースに乏しいスモールビジネスの事業者でも直ぐに取り組めるブランディングの施策です。
共有型のメディアプラットフォームで自社や自社の商材(製品やサービス)のPRブログをコンテンツにして、いつでも好きな時に、何度でも配信することができます。繰り返し、繰り返し露出することができます。マーケティングとブランディングの基本は露出し続けることです。